誰がすきかと聞かれたら、間違えなく君だと答えるよ。 だからお願い。 【貴方のいない愛など要らないと言って。】 |
僕は未だ、君の言葉を待っている。 そう言えば、言葉など無かったとか。 そんなことを風に吹かれながら観月が言った。 ゆっくりと、確かめるようでいてもしかしたら、今思いついたばかりかもしれない言葉に、木更津は「ナニが?」と聞く。 「いえ、なんでもありません。」 「赤澤のことだ。」 当たった?と嬉しそうに観月の顔を覗き込む木更津に、ため息を意図的にかぶせた。 わかりやすい人間だと、自分でも思う。 木更津と挨拶もそこそこに別れ、一人でコンビニに入る。 ガーっと、無機質な扉が開き店員が、無愛想な声でいらっしゃいませ、と言う。 大げさなくらいの照明器具に照らされたプリンに手を伸ばす。 「それ、新しいやつ?」 「・・・ ・・・」 あかざわ、と小さく声をかけた人物の名を口に出した。 観月のものよりも二回りほど大きい手の平でプリンの包装を掴むと観月の頭の上にのせ、買ってやろうか?と口の端を上げた赤澤にいりませんと観月が答えた。 「自分で買いますから」 「人の好意は受け取れって」 貴方こそ人の言う事を聞け、と密かに観月は思ったが口には出さずにレジへ向う赤澤を見た。 後姿に、急に心臓が苦しくなることもある。 それは何故か、彼に限ったことだった。 どうしてだかはわからなくて。 切ないと、この思いを人はそう名付けたのかも知れない。 「・・・赤澤。」 「ん〜?」 「いえ・・・なんでも。」 「そう?」 愛してると言って欲しいなんて。 (そんな女々しいこと) (ただでさえ、僕女々しいんだし。) 自分の思考回路に〔下らない〕の蓋をして棄ててやる。 赤澤がレジの店員(観月には初老の女性に見えたが)にナニやら話しているのを横目で見ながら店を出る。 彼が持っていってしまったプリンが欲しかったので、もうこの店にいる理由は無いと判断した結果であったし、赤澤も観月の行動はわかっているのだろう。 それは恋人だから、とかではなくて。 (付き合いが長い、ってだけで。) 別に、恋人だからじゃなくて。 (じゃあ何で傍にいるんだろう) 「観月?」 「ひゃっ・・・」 冷たい外気に触れていた頬に、無機物の冷たさと卵と牛乳を固めて出来た洋菓子の冷たさが触れて、観月はそんな声を出した。 その声は、思いのほか赤澤のつぼに嵌ったらしく、彼は暫く笑っていて。 「お前、可愛すぎ」 と、額を小突いた。 実は、観月はそう笑った赤澤の顔を可愛いとも思ったのだが、口に出すと不貞腐れそうだったので言わないで置いた。 風が通り抜ける。 寒いですね、とか早く部屋に帰りたいとか取り留めの無いことを二人して話す。 それから。 観月の視線は、渇いている赤澤の唇にいった。 それは特に意味の無いことで、でも今の観月にはとても神聖なものを見ているかのような気にさえなった。 「ナニ?」 (その唇で) (アイシテルといって欲しい何て言ったら) 「いいえ。」 END