【恋文】

 

拝啓 赤澤吉朗様


 


貴方にこうして手紙を書くのは初めてだと思います。
此方は、随分と寒くなって先日初雪が降りました。
東京では長いこと目にしなかった粉雪なので(結局東京の雪には慣れず仕舞い)酷く懐かしく。
貴方に手紙を書こうと思ったのです。
雪はとても冷たくて指で触れたら溶けてしまいました。
あるいは、元から存在しなかったのかと思うと心臓の周りの血管が収縮して苦しくなってしまい、
こんなとき、何も考えずに答えを出す貴方が懐かしく。
久しぶりに見た地元の雪と、貴方への幻想のような物が二つのノスタルジィとなって僕を襲って。
思わず、雪の中で涙を流したと書いたならば『可哀想に』と笑ってくれますか?
それを微かに望みながら僕は使い慣れない便箋を手にとり今を綴っているのです。
メールでも良いかとも思ったのですが返事がすぐに返ってきてしまうと嬉しさと同時に逢えはしない距離が切実に感じられてしまうので
手紙にしました。
手紙なんてモノは今時誰も送らないでしょうが(特に東京なんかでは)
父と母は下の部屋で眠りに就いている今は時計では二時十七分。
その数字はいやに眠気を誘うのですが筆不精な僕がここでペンを置いてしまったら暫くメールも億劫になってしまいそうだったので書いてしまいます。
文章や字体がおかしくなっていたら眠いのだと察してください。
おそらく、貴方は僕がいなくても変わりなく馬鹿だとは思いますが、僕はというと最近はめっきり大きな声も出していません。
(最後に出したのは貴方から電話が来たときです。)
東京では相も変わらず車が黒い煙を吐き、星が姿を暗ましているのかと思いますが、それでも
相も変わらず貴方がいるだけココよりは、ましです。
未だに降り続いている雪は白くて冷たくて誰かの肌とは大違いで。(そういえば、貴方が以前に僕のことを雪と称した理由が解りかけました。)
本当は、それが泣いてしまった理由だといいのですが。
如何せん僕にはわからなくて。

この便箋は姉に買ってきて貰ったので(外出は余り好きではないのを覚えているでしょうか)詳しくは知りませんが、地元限定の便箋だそうで。
なにやら此方が否かなのを露呈しているようで噴出しそうになりましたが姉の手前そんな事も出来ません。
だから貴方は笑ってください。
貴方に会えなくて、手紙なんかを書き出す僕や、この地味な便箋に、それから逢いにこない貴方を。
笑ってくれたら満足です。
逢いに行くのはまだまだ先になりそうですが、貴方がチケットさえ送りつけてくれたなら今すぐにでも行くつもりでいます。(この意味が理解できなかったら裕太にでも聞いてください)
貴方がいる東京よりも此方は淋しくて偶に無性に帰りたくなってしまいますが、
東京に『戻る』と考えてしまうのは貴方がいるからでしょうか。
何かを考えようとすると白い雪に邪魔されてしまうのでそろそろペンをおきます。
いつか逢える日までお元気で。

 


観月はじめ 拝

===終===