大きく手を握りしめ
君を捕まえてしまえ。


【YOU AER who's?】


フィールドの上。

身体に馴染みきった空気の中、同じように身体に染み込んだ声が聞こえる。

10番の背番号を付けたその少年の声に、その少年と同じストライプのユニフォームを着た少年達が動く。

サッカーの名門、武蔵森学園の司令塔 三上亮

彼の姿を、眼光に据え、渋沢はため息をついた。

試合中に不謹慎だとは思いながらも、どこかで練習中のミニゲームだから構わないかとも思う。

本来は、そう言った考えは言語道断と監督にどやされるのだが。

大きなコートの上で、ゴールを守る渋沢とゲームメイカーである三上の間には、他の選手よりも相当な距離がある。

肌に突き刺さる紫外線に、もう一度ため息。

キャプテンと持て囃されていても、渋沢だってたかだた14歳の、それも恋する少年だ。試合中だろうがなんだろうがため息だって出る。

しかも三上の我侭(だと渋沢は信じているが、本当の理由は解らない)でここ三週間致していない。


「……うん。」


意味もなく、キーパーグローブを嵌めなおす。逆光の中の試合は2-0で三上率いる赤チームが優勢だ。

当分、渋沢に出番はなさそうなほど三上が動き回っている。

普段の渋沢であったなら、ボールの行方を追い、相手のキーパーになったつもりでシュミレーションなどをしているのだが。

今の彼の視線と思考はただ一人に注がれている。

同級生の誰よりも大きい掌を広げ、腕を前に伸ばした。

水分の少ない砂だらけのコート。

黒と白の縞模様。

その中で、10番の背番号だけがやたら目立つのは、自分に責任があるのだろうかと渋沢は思う。

きっと、頭がいかれてる。

渋沢の人差し指ほどの大きさしかない三上の姿を、手の中へ収める。

ぎゅっと握ると、まるで本当に彼が手に入ったかのよう。


「つかまえるよ、三上。」


手を開かなくても、三上は、コートを駆け抜けてゆく。そう、渋沢の手は次の瞬間には三上を逃していた。

さあ、試合に戻るか。

誰に言うでもなく、そう口に出すと、DFが少し驚いて「ひょっとしてサボってました?」と聞く。

それに曖昧な笑顔で答え、渋沢はサッカーボールの行方を追った。

fin

短いです。でも、「つかまえた」っていうのがやってみたかったんです。ヤってみたいのは三上です。