15バス停


 日陰のないコンクリートの上。
雨に何年打たれつづけたらこうなるのか、木製のベンチは座る事を躊躇させる危うさでガードレールに凭れている。
あと、10分。
「試合での10分はなげーんだけどな。」
三上はそう嘆いてショルダーバックを地面に放った。
「待つしかないだろ?」
まるで聖母のような微笑で渋沢は返したが、こんな時の彼の笑顔は意味が無いことを三上は知っている。
条件反射で笑う男なんだ。
「だぁ…暑いし。」
「夏だからな。」
「そんな当たり前の会話は望んでねぇ…っ!」
八月の午後1時、紫外線がコレでもかと地上に降り注ぐ。どんな会話を望んでいるのかと渋沢が問えば
「てめぇでかんがえろ」
と三上は考える事を放棄した。「溶ける」とか「蒸発する」と唸りながらしゃがみ込んでいる三上に渋沢が言う。
「…愛してるよ三上。」
三上の動きがビデオの一時停止のように止まった。
「……暑さでいかれたか…?」
「いや、どんな会話を望んでるのか考えてた。」
愛でも囁いて欲しいのかと。
腕を組みながら真面目な顔で渋沢が言うので三上は頷きかける。そんな馬鹿な。
「はいはい。」
「違った?」
「ちげーよ馬鹿。」


そんなある暑い日の昼下がり。



FIN
落ちはないです(笑