公園




雨の降った後の公園がなんか好きだ。

「理解できる話題を提示してください。」
三上がちょっと不満そうに湿ったベンチに腰掛ける。夕立で全体に水を被った公園には誰も居なかった、俺と三上しか。普段なら騒がしく遊んでいる子供や立ち話に夢中になる母親達やダンボールのおうちの方々も謀ったかのように居なかった。
「理解できない?」
まったく出来ない、と三上はシューズの先で泥をえぐった。意味のわからない螺旋を描きながら
「例えば、どの辺が好きかを説明してくれ。」
そう呟く。
どの辺……。俺はあたりを見回した。そこはブランコと砂場を原色をちりばめた遊具があった。もう半分樹が腐ってしまっているシーソーに、俺は片足を乗せる。ぎぃぃと鈍い音がした、古い戸を開ける時みたいな。
「あめの匂いがさ、たまってるきがしない?」
「しない。」
会話終了。三上は俺との会話の広がりというものを求めていないらしいことが解った。
足だけで何度かシーソーを動かす。あぁ小さいころはよく姉ちゃんに乗せられたな、と思う。懐かしい。ああ、それもあるのかも。好きな理由。
「あと、懐かしいし。」
雨が降った後の公園はなんだか。
誰も居なくて、音も無くて、しっとりと全体が重そうに佇んでいるから懐かしくなる。昔を思い出しやすくなるのかもしれない。センチメンタリズム、だっけ。
「ふぅん。」
興味なさそうに三上が頷く。そう言えば俺は興味津々の三上って見たことが無いのかも。……でもあまりみたくもない。
「三上は、懐かしくならないの?」
そう訊ねると三上は足をじたばた宙に浮かせながら
「俺公園より林とかで遊んでた。」
と言った。林。思わず三上を見つめてしまう。
「……さすがだ埼玉。」
「コロス。」
三上が立ち上がり俺をめがけて地面を蹴った。さすが武蔵森の司令塔、的確なコントロールで泥が掛かる。
「いやーん。」
だって林なんてそうそう見ないわよ、と唸る。何処の地域の話だよ、と。
「これだから都民は嫌だ。つーか新宿区民。」
「ネオンで育ちましたから。おほほほほ。」
右手を口元に持ってきて笑う。というか地面を蹴った所為で三上のズボンの裾も泥にまみれていたのが面白かったからだ。教えないけど。


FIN
ライトノベル風。といってみる。

安藤の中で
三上=埼玉県民(浦和ではありません。)
中西=東京都民(新宿:歌舞伎町の傍。)
渋沢=神奈川県民(箱根:祖父母が温泉宿経営。)
って感じ。
藤代は都民、辰巳は実は滋賀とか。根岸は木更津(適当)