はらはら舞う

 きらきら散る


[pinky snow]


(雪だ)
顔をあげた。深い意味はなかったが、なんとなく。
季節はずれの雪は薄紅色で、すぐにそれは雪ではないと解ったがそれでも風の抵抗と受けながらも灰色の地面に落ちる姿は正に。
(桃色の雪が、降って来たみたいだ。)
舞い散る桜を、鬱陶しそうに眺めながら、渋沢は歩き出した。
コンクリートの堅さを、訳もなく踏みしめる。
「春だな。」
「恋でもする?」
からかうように三上が笑った。ああ、ピンクレディだっけと聞くと、違うキャンディーズ。と訂正を受ける。
「よく知ってるな」
「うっせぇ」
白なのか、桃色なのか、区別のつき難い花びらを、掌に収めようと渋沢は手を伸ばした。
触れる寸前で、計ったかのように逃げてゆく花びら。
(まるで君のよう。)

はらはら
きらきら

手を彷徨わせても一向にそれは渋沢の指には触れない。もどかしい。
「何してんの」
三上が渋沢の様子を不審に思ってそう訊く。
「花びら、とりたい。」
「ばぁか。」
がきくせぇ。三上は、その花びらの向こうで空を見上げる。
触ることさえ敵わない花びらの中にいる三上がやけに美しく思えるのは、春が見せる所為だろうか。
ふわりと舞う花は三上に焦点を合わせると一層薄紅の雪。
「うん、でも。」
(雪は、掌にのったら溶けてしまうだろうか。)
何度か、手を上下に暴れさせ、まるでサッカーのボールを取るように桜を取ろうとする。
上手くいかずに、何度も繰り返す。
「お前さぁ、サッカーとは違うんだから。」
もっと丁寧にやれって。
呆れた声で、三上に笑われるが、それでも渋沢は続けた。
「うん、でも」
馬鹿にしながらも、三上は渋沢の傍を離れ様とはしない。
笑ったまま、彼を見詰める。
「これが取れたら……キスしようか」
(桃色の雪が、君を彩る。)
「ばぁか。」


FIN
日記にUPしていたSSの加筆VERです。